逞しくなったね、と薫先生が昔を懐かしむように小さく零す。まるでお父さんみたいな言い方だ。
確かにこの世界のことを知ったばかりの頃の私と比べれば、かなり変わったはずだ。
お父さんといえば……。
「そういえば薫先生、お父さんには会いましたか? 神修に来ているんですよね」
「げ、なんで知ってんの」
露骨に顔を顰めた。
「側役の二人が、外の情報は全部教えてくれるので」
ちらりと視線を向けると、ふたりは得意げに鼻をふくらませてピースサインを作って見せた。
額を抑えて息を吐いた薫先生。
「忙しくてまだちゃんと会って話してはないけど……時間があったらちゃんと話すよ」
薫先生はずっと実家を避けていたし、話す気になっただけでも大きな一歩だ。それ以上のお節介は不要だろうとは思いつつ、隆永宮司に会った日のことを思い出して口を開いた。
「隆永宮司、薫先生が神修の先生になってたことを知ってたみたいですよ」
あの日、私たちが薫先生の生徒だと名乗った時に隆永宮司はただ「そうか」とだけ答えて、まるで最初から知っていたかのような反応だった。
隆永宮司は薫先生が神修の先生になったことを知っていた。つまりずっと薫先生がどう過ごしているのかを気にかけていたということ。ずっと影から愛情深く、薫先生のことを見守っていたということだ。
お互いに話さなかった時間が長かったから伝わらない気持ちが多かったのだろう。でもきっと凝り固まったそのわだかまりは、少し言葉をわすだけで直ぐにほぐれていくはずだ。
驚いた顔をした薫先生は、「参ったな……」と後頭部をかいて、赤くなった頬を隠すように俯いた。



