「巫寿!」
「巫寿ちゃん!」
「こっちこっち!」
溢れた涙は嬉し涙だ。こんなにも温かい気持ちになったんだから、間違いなくこれは幸せな涙。そうじゃなきゃ皆が心配してしまう。
だけどこれはもう────我慢できない。
階段を一段降りることすらもどかしい。何度踏み外しそうになりながら、みんなの元へ駆け寄った。
「みんな……ッ!」
勢いよく土を蹴り上げて大きく一歩踏み出す。
満面の笑みで両腕を広げてくれたみんなは、瞬時にハッと青ざめて広げていた腕をバッと閉じた。
「ダメダメダメ! ストップ巫寿ちゃん!」
「俺達も励ましの抱擁はしたいけど、今の巫寿には触っちゃダメなんだった!」
「止まれ巫寿!」
みんなの冷静な制止に私もハッと我に返る。
これまでの数々の神事は私の体を清めるためのもの。みんなの体が不浄だと言う訳では無いのだけれど、社入りするまでは家族だろうと誰だろうと清められた審神者代の体には触れてはいけない決まりだ。
慌てて両足を踏ん張ると、ずざっと地面が砂埃を上げた。両腕を回してバランスを取る。
ばくんばくんと脈打つ心臓を抑えて「危なかった……」と深く息を吐く。プッ、と吹き出す声が頭上から聞こえて顔を上げる。顔を真っ赤にして笑う皆と目が合って、なんだか私までおかしくなった。
嘉正くんに来光くん、泰紀くんに先輩たち。鬼市くんや禄輪さん、お兄ちゃんも薫先生も。これまで私が色んな場所でお世話になった大切な人たちがずらりと並んでいた。
そして────。
少し前に顔を見たばかりなのに、胸は喜びで軽やかに弾んだ。
恵衣くんも、来てくれたんだ。



