言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


「そうだよ、だからもっと早く走って!」

「これって神事なんだよね?」

「神事よりも、もーーっと大事なことです!」


廊下の端っこまで来ると、非常階段を開けて庁舎の外にある螺旋階段を勢いよく駆け下りていく二人。

どうして非常階段……? これまでの神事で外の非常階段を使って移動したことなんてなかったし、一番大事な神事でそんなことをするだろうか?

でも先導してくれる二人がそうだと言うのだから間違いないのだろう。二人を信じてギィギィと軋む階段を駆け降りる。

三階と二階の中間にある踊り場で何となく視線を向けた庁舎裏の影に、たくさんの人影が見えた。あんな所に人がいるなんて珍しいな、なんて思って視線をそらそうとしたほんの一瞬で、見慣れた顔が見えたような気がした。

え?と目を瞬かせると、すぐに階段の影で見えなくなる。自然と足は速まっていく。


「ね、ねぇ二人とも。さっき"皆が待ってる"って言った?」


前を行く二人に声をかけた。

振り返った二人は悪巧みが成功したようにくふくふと笑って、踊り場で足を止めて見てを開ける。


「そうだよ、巫寿ちゃん!」

「皆待ってます……!」


二人の間をすり抜けて踊り場の手すりに身を乗り出した。

足音に気付いたのか、庁舎裏にいた人たちが顔を上げて振り返る。いつもの変わらない満面の笑みと目が合った。

休み時間にじゃんけんで負けて皆のジュースを買いに行き教室に戻ってきた時、長期休暇明けに車乗り場で再会した時、窓から運動場を見ていて目が合った時。


今となってはとても大切な何気ない日常に、いつもあった笑顔だ。