たくさんの人たちにここまで良くしてもらっているのに、それ以上を望むのは私は欲張りなんだろうか。
こんこん、と休憩室の扉が軽くノックされた。どうぞ、と小さく答えると盛福ちゃん達がまるで逃げ隠れるようにコソコソと中へ入ってくる。
「二人ともどうしたの?」
「シッ! 静かに!」
唇に人差し指を当てた盛福ちゃんが身を乗り出した。慌てて口を抑えてこくこくと頷く。
二人はお互いの顔を見て頷きあった後、真剣な表情から笑みが零れてしまっている締まらない顔でずいと顔を近づける。
「車の用意ができたので、今から行きましょう」
「え、あ……そうなの? でも他の巫女さまたちは?」
そう尋ねると分かりやすく二人の目が泳いだ。
「それは、えーーーと……ほら、ほかの業務で忙しいらしくて!」
ほかの業務で忙しい?
自分で言うのもなんだけれど、審神者代の社入り神事はこれまで執り行われた神事の中で一番重要なものだ。
それなのに他の巫女さまたちが忙しいから来れないなんてことがあるのだろうか?
「いやだってほら、こんな状況だし! みんな忙しいから私たち二人で連れて来いって言われたんだよね!」
「そうですそうです……! ほら、さっさと行かないと遅れちゃいますよ! "皆待ってます"!」
もどかしそうに足踏みするふたりを怪訝に思いながらも休憩室を出ると、二人が前に立って歩き始めた。歩き始めたというか、もう駆け足だ。
「ちょ、ちょっと待って二人とも。そんなに急がなきゃいけないの?」
早速息が上がってしまい、ゼィハァと喘ぎながら二人の背中を必死に追いかける。



