真剣な横顔だ。少し青白い。休憩時間はあるようだから、恐らく飯は食えているはずだ。目の下にくまがある。きっと緊張からあまりちゃんと眠れていないのだろう。
頭飾りの花びらに人差し指でそっと触れているのが見えた。目を瞑って小さく深呼吸している。列に割り込んだ二人が巫寿に追いつくと、彼女の耳に顔を寄せて何かを耳打ちした。
目を丸くして驚いた表情をした巫寿があちこち見回す。そして、────まるで吸い寄せられるように二人の視線が絡んだ。
潤んだ瞳は間違いなく自分だけを見つめていた。
一瞬泣きそうな顔をして、直ぐに嬉しそうに頬を赤らめて、何かを訴えるように力強く頷いて、最後は照れたようにはにかんだ。
周りの音も周りの景色も何もかもが消えて、五感は巫寿だけに集中していた。
彼女の一挙手一投足を見逃さないように、瞬きも忘れて見つめ続けた。
不安げに見えた表情はいつの間にか消えていた。僅かに微笑みを浮かべ、力強く前を見つめながら確かな足取りで歩いていく。
ガラスの花飾りがしゃなりと黒髪の上で揺れて、施された鶴の模様が羽ばたくように千早の袖が揺れる。巫女鈴の音色が彼女の歩む道を清め、彼女が歩んだ道は聖域になった。
まるで神話の女神だ。美しいなんて言葉では表せない。存在自体が気高く、尊く、壮大でいて畏敬の念すら抱かせる崇高な存在。
もう彼女は、誰かに支えてもらうだとか誰かに頼るだとか、そんな段階にはいないのだ。
それに気づいた瞬間、大切なものを無くしてしまったかのような焦りと深い悲しみが込み上げてきた。



