「────恵衣さんもっと急いで!!」
「最後尾のお前が言うな! 玉珠! そいつの手引っ張ってやれ!」
「任せて盛福ちゃん! コミケで鍛えたこの脚力で……」
「口じゃなくて足動かせ!」
十五分後、猛スピードで社頭を横切る三つの影があった。巫寿と側役二人の休憩時間が残り三分を切った頃だった。
「ていうか恵衣さん、なんで行く先々で呼び止められるんですか!?」
知るかよ!と噛み付きそうになったが、直ぐにその言葉は飲み込んだ。
これまで両親や本庁からの評価を上げたい一心で、自分のことなど二の次で必死に優秀な人間になろうと務めてきた。
信頼を得るために嫌な顔ひとつせずただ働きして、評価を得るためならどれだけ面倒な頼まれ事も断らなかった。これまでのそんな自分の行いが、今になって自分を苦しめるとは。
会いたい女に会いたい時に会えないなら、そんなちっぽけな評価なんていらなかった。欲しいのは巫寿が不安な時に隣で支えられる時間で、これからも自分の近くで笑い続けてくれる未来だ。
「恵衣! 丁度いいところに。報告書の件なんだが……」
「後にしてください、今はそれどころじゃないッ!」
呼び止めてきた神職に目もくれず隣を駆け抜ける。
一秒でも早く巫寿の所へ、一秒でも長く巫寿の傍に。



