ふたりの言う通りだ。
この数時間、何度も巫寿の顔がよぎっては頭を振って気を紛らわしていた。気になるなら会いに行けばいいし、この数ヶ月でありとあらゆる規則を破ってきたんだから、そもそも今更規則がどうとか言える立場じゃない。
「巫寿ちゃんの頭についてる髪飾り、恵衣さんがプレゼントしたって聞きました。巫寿ちゃん、神事の時も休む時もずっとつけてるんです」
その言葉に目を見開いた。
あれを買って渡してやった時の、嬉しそうに赤らんだ頬を思い出すと胸が馬鹿みたいに騒いだ。
「辛い時、不安な時、髪飾りに触って深呼吸してるんです。そうすると落ち着くんだって」
きっと初めてのことばかりで沢山戸惑っているだろう。休む間もなく次から次へと神事が始まり、疲れも溜まっているはずだ。
何よりもこれから先のことが不透明で、不安要素の方が大きくて、自分の命がかかっている状況で毅然と振る舞えるはずがない。
そんな時に彼女が自分が贈った髪飾りを拠り所にしていると思うと、どうしようもなく────胸が熱くなった。
不安な心を少しでも慰められていると思うと、自然と頬が緩んで少し目頭がつんとした。
そうか、彼女は。
少なくとも俺が上げた髪飾りを拠り所にするくらいには、俺を頼ってくれているのか。
「髪飾りよりも、恵衣さんが隣にいてくれた方が、きっと心強いはずです」
「本当に、そう思うか」
俯き静かに問いかければ、二人は大袈裟なまでにブンブンと首を振った。
「あったりまえですよ! ていうか誰であっても不安な時に会いに来てくれたら、それだけでもう充分嬉しいですよ」



