「嘉正さん本当にありがとうござます! えっ、でもなんで!? さっきめちゃくちゃ的外れなこと言ってたのに!」
興奮気味に詰め寄る盛福に、嘉正はニヤリと笑った。
「泰紀にまで好きな人がバレたら可哀想でしょ?」
「確かにです……!」
「ナイスガイ!」
それじゃあ、と手に持っていたふたつの木箱を地面に下ろした嘉正は、ひとつを盛福にひとつを玉珠に持たせた。
二人は渡された木箱と嘉正を見比べる。
「えっと……?」
「ふたりが言ったんじゃん。こういう時だからこそ、伝えないと後悔する気持ちがあるって。だから行ってくるよ。悪いけどそれ、まねきの社の社務所に運んでおいて」
そう言って階段を降り始めた嘉正の背中に慌てて声をかける。
「ちょ、どこ行くんですか!」
「そうですよ……! 私たちだって忙しいのに!」
ピタリと足を止めた嘉正が振り返る。そして立てた人差し指を唇に当ててニヤリと笑った。
「瑞祥さんのとこ。皆には内緒ね」
颯爽と階段を駆け下りて言った背中に、二人は呆然と立ち尽くす。数秒後、二人の「ええ!?」という驚愕の悲鳴が響き、山鳥たちが山陰から東の空へバサバサと飛び立った。



