「巫寿ちゃん、おれを助けてくれた。好きって、言ってくれた。だから、特別だと思う」
二人は好きだよ、と瓏に向かって微笑む巫寿を脳裏に思い浮かべた。おれも好き、と微笑み固い握手をかわす二人がもわもわと白い靄の向こうに消えていく。
「信乃も、鬼市も、神修のみんなも、大好き。特別」
「おい瓏、この二人が勘違いするからやめろ。お前のそれは友愛と言うんだよ」
「ゆう、あい……どう書くの?」
「友の愛」
からくり人形のようにトモノアイと繰り返した瓏は、友愛という言葉がいたく気に入ったらしくその場にしゃがみこむと手頃な小石で土を削ってかろうじて読める汚い字で「友愛」と書いてみせた。
鬼市が息を吐きながら二人を見た。
「こいつの言ったことは本気にしないでくれ」
「あ、はい」
「で、巫寿が特別に思ってる相手……だっか?」
こうこくと頷けば、鬼市は僅かに顔を顰めて嫌そうな顔をしたあと小さく舌打ちをした。
「この俺だ────と言いたいところだけど、違う。一応心当たりはあるが、それを俺の口から言うのは間違ってるだろう。だからこれ以上の言及は控えさせてもらう」
そんなぁ、と二人は眉を下げた。
確かに鬼市の言う通り巫寿のプライベートな情報を鬼市から聞きだすのは間違っているのだけれど、手がかりがない現状ではせめてヒントだけでも欲しいところだった。
けれど義理堅いという鬼一族の鬼市が「言わない」と言ったのなら絶対にそれ以上のことは聞き出せないだろう。



