「お二人はどうして……」
「おれ、信田妻のおつかい。信乃の代わりに、報告来た。里も、信乃も、今忙しい」
「八瀬童子一族は本庁に呼ばれて来た。審神者代がかむくらの社へ向かう道中の車は、代々八瀬童子一族の男衆が担ってるからな」
そういえば側役の説明を本庁の役人から聞いた時にそんな話を聞いた気がする。厄祓いの象徴である鬼一族が審神者代の乗る車を途中まで担いでいくのが慣例なのだとか。
まさか巫寿が審神者代になるとはな、そう呟いた鬼市の表情はどこが沈んでいて切なげだった。
そういえば、と二人は鬼市をまじまじと見つめた。
以前、神修で行われた異文化交流学習の時に、巫寿が鬼市を誑かしているという噂があった。勿論それは異例の飛び級合格をした巫寿を僻む一部の学生がでっち上げた嘘なのだけれど、鬼市が巫寿に特別な感情を抱いているのは聞かずとも見てわかった。
もしかして、鬼市さんだったり……?
同じことを考えたのか玉珠と目が合った。無言で頷いた二人は、ずいと身を乗り出す。
「あの! つかぬ事お伺いしますが、巫寿ちゃんが特別に思っている相手って心当たりがあったりしますか?」
「それは、」
「おれ、だよ」
肯定する返事が返ってきたのは、予想に反して瓏の方だった。
ええ!?と二人が仰天するのを見て、鬼市が額に手を当てて息を吐いた。瓏は僅かに表情を和らげて二人を見る。
「巫寿ちゃん、おれのこと好きって、言った。おれも、巫寿ちゃんが好き」
二人はほぼ同時に「ん?」と首を傾げた。



