言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー




「おおおお、落ち着け僕。大丈夫いつも通りやればいい。いつものように書宿(しょしゅく)の明を使うだけだ……!」


文机に向かって必死にそう唱えていた来光の周りで、数人の神職たちが固唾を飲んだ。来光の左手には赤い筆管の筆が握られている。三種の神器、払日揮毫筆(ふつじつきごうひつ)だ。

震える手で針穴に糸を通すように慎重に慎重に穂首を硯に近付けた。あと数ミリですみの中に命毛が沈むというところで、ヒッと誰かが息を飲み込んだ。来光の緊張はピークに達する。

命毛を整えた手は、極寒の空の下に放り出された子犬のように可哀想なまでに震えていた。


「おっ、落ち着くんだ来光くん!」

「そうだ! そんなに筆を握りしめたら折れてしまうぞ!」

「おおおお折れるぅ!?」

「あ、いや今のはものの喩えであって!」

「多分折れないから安心しろ!」

「たぶんんんん!?」


同様で来光のてから筆が滑り落ちた。穂先から落ちた払日揮毫筆(ふつじつきごうひつ)が畳の上を転がり、全員の声にならない悲鳴が響きあう。

その時、スパン!と勢いよく襖が開いて、二人の少女が顔を出した。


「失礼しまーす! 巫寿ちゃんのお友達いらっしゃいますか!」

「あっ、盛福ちゃん。来光さんがいるよ……!」


顔を見せた少女ふたりに、中の男たちは目を瞬かせた。