薫先生が顎に手を当てて「なるほど」と呟いた。
「平田篤胤の久延彦之伝か」
薫先生のつぶやきに対して、周囲の神職が一斉に分かった顔で「そうか」と深く頷いた。
平田篤胤は歴史の授業で習ったような気がするけれど、後半のはなんだろう? でもとにかく、打開策のひとつではあるらしい。
「潜在能力の開花で言うならば、鼓舞の明が効果的なのでは? 鼓舞の明の保有者に連絡を取って協力を仰ごう」
「ひふみ祝詞はどうだ? そこまで強い効果は見込めないが、あれも負を正に変える力があるぞ」
「事前に大規模な大祓を催しては?」
静まり返っていた会議室にたくさんの意見が飛び交い始める。
私が必死に考えてやっとたどり着いたのが幸魂修行だったのに、大人たちは次から次へと案を出して作戦を練り上げていく。
その光景をぽかんと見つめていると、ぽんと頭を叩かれた。顔をあげると薫先生が優しく目を細めて私を見下ろしていた。
「だから言ったでしょ、大人を頼れって」
「……はい」
「大丈夫。これは巫寿だけの問題じゃない」
私だけの問題じゃない。
その言葉を聞いた瞬間、ずっと胸を重くしていたものがほんの少しだけ消えたような気がした。
議題は、そもそも本当に天地一切清浄祓でしか空亡を封印できないのか、という方向に流れていった。とにかく思いついたものは口に出して、全員で是非を判断していく。



