「芽が妖たちに、空亡の残穢を奪うよう呼びかけた。六日後に百鬼夜行が起こる」
は、と息を飲んだのは私だけだった。他の人達はもう既に知っていたらしく、暗い表情で俯いた。
百鬼夜行────数多の妖たちが列をなし夜を練り歩くこと伝承上ではそう呼ぶけれど、神職が言う「百鬼夜行」は少し意味が違う。
妖たちが徒党を組んで暴動を起こし、神職と妖が対立関係になった時の戦争をそう呼ばれる。
「百鬼夜行って、そんな」
「芽の言霊だよ。あの場にいなかった本庁の役員や幽世の妖一族の里でも確認されているから間違いない」
恐らく私がお兄ちゃんと合流して気を失っている間の話だ。だからあの時お兄ちゃんは「さっき気になる事が起きて」と言ったんだ。
三日で一割。つまり今私の言祝ぎと呪が五対五の割合だったとしたら、三日で六対四、六日で七体三。ただ六日間飲まず食わずで奏上が出来るわけもないし、六日後には百鬼夜行が始まってしまう。
薫先生の言う通り、この作戦じゃ無理なの……?
また沈んだように静まり返ったその時。
「椎名巫寿の発言を信じるにしろ信じないにしろ例の祝詞を奏上をするしないにしろここは可能性を討論する場じゃないのか」
淡々とした早口が沈黙を破った。
みんなの視線が嬉々先生に向いた。首筋にあてがわれた大きなガーゼに血が滲んでいて痛々しい。
視線が集まろうと気にする事はなく、いつも通りの無表情で話を続ける。
「情で可能性を潰すなそんなに情があるなら生かす可能性を増やす方法を考えろ」
「そうは言ったって嬉々、他にどうすれば」
「幸魂修行だけが全てじゃないだろ、それでも神職か。幸魂でも間に合うように能力を底上げすればいい」



