「このクソジジイッ! 俺の妹に犠牲になって死ねって言いたいのか!? だったらお前が死ねッ!」
「い、今死ねと言ったのか!? 神職としてあるまじき発言だぞ!」
「巫寿の兄として言ってんだよクソハゲッ!」
「は、ハゲェ!?」
黙って聞いていた禄輪さんが、頬をひきつらせて「おい」と薫先生に視線を向けた。
薫先生は懐から形代を二枚取り出してフッと息を吹きかける。皆の前を横切ったその紙は、お兄ちゃんと役人のおじさんの口元にべたりと張り付く。
「話が進まないから、ごめんね祝寿。ちゃんと巫寿の保護者としての意見は尊重するから」
塞がれた口で「チッ」と舌打ちしたお兄ちゃんは、乱暴に椅子に座り直す。
ンーッ!と騒ぐ役人のおじさんを一瞥した薫先生は、冷たい目を向けたあともう一枚の形代を吹きつけておじさんの口を完全に塞いだ。
「今のあの者の発言については、本庁を代表して私が謝罪する」
玉じいの隣に座っていた、禿鷲のように鋭い目をした背の低いおじいさんが口を開いた。現日本神社本庁本部長である蓬莱栄本部長だ。
観月祭の挨拶で数回見かけた程度で、実際に会って喋ったことはない。なんならその鋭い目が怖くて、苦手意識すら抱いていたくらいだ。
そんな人に深々と頭を下げられて、居心地の悪さに身を縮める。



