「ひとつ確認しておきたい」
禄輪さんが静かに口を開いた。複雑な表情だった。怒っているのか泣くのを堪えているのかよく分からない顔で、ぐっと眉間に力を入れて私を見つめる。
「最後まで話を聞いて、私たちは巫寿の作戦を真っ向から否定する可能性もある。そうなった時、これまでみたいに自分の判断で勝手に動かないと、言霊にできるか?」
真剣な眼差しから目を逸らさず、深く頷いた。
「言霊にします。自分勝手に動きません。ちゃんと相談します」
いいだろう、と禄輪さんが少しだけ表情を和らげる。
それから私は、これまで私が見てきたことや知ったことを包み隠さず打ち明けた。
名付け親が志ようさんであること。名付けられたことによって、志ようさんから授力を授かり、同じ運命を分かちあったこと。その運命は、空亡を倒すにはどちらかが死ななければいけないこと。保存の結界で志ようさんの肉体はまだ滅びておらず、未だ取り込んだ残穢を浄化していること。
それら全てを話終えた時、会議室は耳鳴りがしそうなほど静まり返っていた。
こほん、とわざとらしく咳払いをしたのは、二年生に進級したての頃私を本町の会議室に呼び出して、私が「先見の明」を持っているのかを尋問しようとした役人のひとりだ。
威張ったような顔で額の汗を拭い「つまりなんだね」
と続ける。
「君の話が全て本当なら、君が天地一切清浄祓を奏上すればあの忌々しい空亡を祓除できるということかね」
ガタンッとパイプ椅子が後ろに倒れる音がして振り向くと、今にも弾け飛びそうなほど額に血管を浮かび上がらせたお兄ちゃんが「抑えろ祝寿!」と両脇を掴まれていた。



