でももう決めたことだ。
お兄ちゃんが私を大切に思うように、私もお兄ちゃんを大切に思っている。お兄ちゃんだけじゃない。友達も、先輩も、先生も、これまでに関わってきた神職さま達も。
お兄ちゃんの手首を掴んだ。唇をすぼめたお兄ちゃんが訴えかけるように私を見下ろす。
守りたい、皆を。
でもだからって────自分の命を諦めるつもりもない。
「話だけでも聞いて。自分の命を諦めたつもりじゃない。私なりに沢山考えたから」
お兄ちゃんがくしゃりと顔を歪めてギッと奥歯を噛み締めた。
「聞くだけ聞こうよ。俺だって担任として、大人としては大反対だよ。ただ解決の糸口が見つかるきっかけになるかもしれない」
助け舟を出してくれたのは薫先生だった。目が合うとちょっと寂しそうに笑って「おかえり。後で説教ね」と口を動かす。それを嬉しく思ってしまう私は重症だ。
お兄ちゃんに視線を戻す。相変わらず怖い顔をしたまま、ふっと視線を逸らした。
「聞くだけだ。絶対に許可はしないからな」
「うん……ごめんね。ありがとう」
おいで巫寿、と薫先生が私に向かって手招きした。神職さまたちが道を開けてくれて、会議室の真ん中に辿り着く。
顔をあげると様々な視線が向けられているのに気づいた。不安、心配、期待、色んな感情が入り交じっている。
恵衣くんと目が合った。未だに怒った表情でじっと私を見ている。
それもそうか。無視して振り切ってしまったんだから。後で話せる時間があればいいんだけれど。
とにかく今は、これからの作戦を考えなければ。



