「巫寿、行くよ」
神職さまたちを掻き分けて前に出てきたのはお兄ちゃんだった。貼り付けたような笑みを浮かべて大股で私の元まで歩いてくる。
ガッと勢いよく手首を掴まれた。あまりの力強さに顔を顰める。指先がたちまち白くなった。
「いつまでもこんな馬鹿共と一緒にいたら、巫寿が危ない。兄ちゃんと出ていこう」
吐き捨てるようにそう言って私の手を引っ張る。その目は激しい怒りで満ちていた。
「待ってお兄ちゃん」
「待たないよ。俺はお前にそんなことをさせるために、ここにつれてきた訳じゃない」
「お願いだから話を聞いてッ……」
「聞かないよ……────聞くわけねぇだろッ!!」
殴りつけるような怒鳴り声に体が硬直した。声を荒らげたお兄ちゃんに皆の視線が集まる。
「これ以上、巫寿を利用させてたまるか。誰も助けに行かなかったくせに、空亡を祓除できる可能性があるなら利用するのか? そんな都合のいい話があるかよッ!」
「お兄ちゃん待って、違うの、私が自分で言い出したことで」
「そんな選択を選ばせるくらい、俺たち大人が追い詰めたってことだろ! 大事な家族を犠牲にして助かるくらいなら、俺は進んで死を選ぶ!」
怒鳴るお兄ちゃんの目尻か大粒の涙がこぼれた。
お兄ちゃんはいつも笑っていて、怒らせた時だって最後は「しょうがないなぁ」と笑って許してくれて、私の前で泣く姿なんて滅多に見せたことはなかったのに。
私が選んだ選択がどれほどお兄ちゃんを傷付けるのか、分かっていたようで分かっていなかった。



