疲れきった表情の鶴吉さんが、泣き腫らした目を細めて笑った。あまりにも痛々しすぎる笑みだった。
「声、かけてやってくんねぇかな」
俯いた皆が私が通るための道を作った。その中に恵衣くんもいた。何かをこらえるようにキツく唇を噛み、じっと私のことを見ている。
みんなの間を通り抜けていると白い布の上に割れた眼鏡が見えて、足の力が抜けてその場にぺたりと座り込むと、少しだけめくられた白い布の下によく知っている顔が目を瞑って眠っていた。
悪巧みを閃くと歯を見せてニヤリと笑う口は半開きで、綺麗なつり目は静かに目を閉じている。目尻から頬にかけて沢山の乾いた涙のあとがあった。
「亀世、さん……?」
呼びかけた。返事はない。まぶたが震えることも、腹が上下することも、軽く手を振って答えてくれることもなかった。
そこにあったのは、大切な仲間の死だった。
「嘘……なんで、」
「聖仁の仇をとるって、こいつ前線に飛び出していきやがって。本当に馬鹿だよな」
向かい側で亀世さんの手を握り、祈るように自分の額に押しあてていたのは瑞祥さんだった。最後に会ったのは聖仁さんが亡くなった日の夜だった。
頬は痩せこけて、酷いくまがある。
「俺が天司に殺されそうになった時、間に入って俺を庇ったんだ。俺よりも運動神経悪くて、チビで、痛がりなくせにさ」
鶴吉さんが頬の涙のあとを指で擦った。
そこでやっと、あの時お兄ちゃんが怖い顔をして「二人はな」と言った意味がわかった。



