真夜中だと言うのに、本庁の庁舎の全ての部屋には明かりが灯っていた。
人間とは昼夜が逆転している妖や夜勤の神職のために夜間でも窓口は対応しているけれど、建物全体に明かりがついていることはかなり珍しい。
それに加えて玄関口は役人たちがひっきりなしに出入りしており、参道を挟んだ対面側にあるまねきの社の社務所の雰囲気も似たようなものだった。
沈んだ重苦しい空気の中に張り詰めた緊張感を感じる。
一体何があったの……?
「祝寿! 戻ったか!」
お兄ちゃんの名前が呼ばれて振り返った。
煤けた白衣に破れた紫袴を履いた男性が、私たちに向かって走ってくる。その人が目の前まで来てやっと、かむくらの神職のひとり、百さんのお兄さんである萬さんであることがわかった。
膝に手をついて息をしながらお兄ちゃんの肩をパンッと叩く。
「お前、本当に、心配させんなよ!」
「すみません萬さん、連絡もありがとうございました」
ふー、と深く息を吐いた萬さんが顔を上げ、目が合った。
怒られることの心当たりが多すぎて身を縮めたけれど、むしろ励ますように肩に手を乗せられた。
「祝寿は俺についてこい。本庁で緊急会議が開かれてるから、お前にも参加して欲しい。報告もそこで」
じゃあ私も、と身を乗り出すと、萬さんは片手で続きを制した。



