「恵衣くん、無事なんだね」
深いため息を吐いたお兄ちゃんが不貞腐れた顔で膝の上に頬杖をついた。
「兄ちゃんだって色々大変だったんだけど」
お兄ちゃんにはピンチのところを助けてもらったし感謝しているけれど、正直好きな人の安否の方が私にとっては重要だ。
「……とにかく、私がそっち側なら同じ選択をしたと思う。お兄ちゃんが怒る気持ちは分かるけれど、いまは一人でも多くの神職の助けが必要なの。だからお願い、分かって」
目尻の涙を拭ってお兄ちゃんの手を握る。お兄ちゃんは顔を歪めて俯く。そして長く深く息を吐いて、全てを諦めたかのような疲れた顔で私を見た。
「もう二度と、俺の前から黙って居なくならないでくれ。それを約束してくれるなら、一緒に戻ってやる」
うん、とお兄ちゃんの小指に自分の指を絡めた。
「もう、黙っていなくなるようなことはしない」
「約束だからな。俺は巫寿を失うのが何よりも怖いんだ」
「……うん」
お兄ちゃんの大きな掌がガシガシと私の頭を撫でた。目を瞑ってそれを受け入れる。そうしないと罪悪感で押し潰されてしまいそうだった。
嘘はついていない。黙っていなくなるつもりはない。
私が考えている作戦には色んな人の助けが必要だから、かむくらの屯所についたらお兄ちゃんにもそれを打ち明けるつもりだ。
今話さないのは卑怯かもしれないけれど、きっとそれを聞いたらお兄ちゃんは激怒して私を連れ出すか最悪どこかに閉じ込めるくらいのことはするだろう。



