どうして?とお兄ちゃんが繰り返す。怒りに満ちた鋭い目が私の手元の鈴を睨みつけた。
「危険な状況だった巫寿のことを、あいつらは誰一人として助けに行こうとしなかったんだぞッ! そんな奴らを信用できるわけないだろ!」
ほんの一瞬動揺し、慌てて首を振った。
「……別れる直前で嘉正くんたちが天司に攫われたから、かむくらの神職たちはその捜索に出たんでしょ?」
図星だったのか、お兄ちゃんはバツが悪そうに目を逸らした。
「三種の神器や私の居場所を聞き出すために、二人が酷い目に遭わされるかもしれない。それに引替え私は来光くんの御札があるから数日は隠れていられる……だから優先されなかったんだよね?」
それはそうだけど、とまるで言い訳する小学生のようにもごもごと呟いたお兄ちゃん。
つまり恵衣くんは無事にかむくらの神職に合流して、二人の危機と私の現状を伝えてくれたということだ。
何度も何度も連絡しようとした。嘉正くんたちが襲われたあの場所へ、恵衣くんはひとりで戻って行った。それがどれだけ無茶なことなのか、危険なことなのかは考えなくてもわかる。
でもそれは皆がここまで繋いでくれたものを私が無駄にするのと同じこと。孤独と不安に押しつぶされそうになる度に、別れた時の恵衣くんの顔が思い浮かんでグッと踏ん張れた。
両手で顔を隠すと手のひらに雫が落ちる。



