言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


廊下を歩く足音が部屋の前で止まった。スッと障子が横に開くと、濡れた髪をガシガシとタオルで乾かすお兄ちゃんが立っていた。

お風呂に入って泥を落とし髭も沿ったのか、再開した時の薄汚さはすっかり無くなっている。

起き上がって布団の上に座っている私と目が合って、バサリとタオルを足元に落とす。

そしてぎゅっと眉間に皺を寄せるとずんずんと大股で歩み寄ってきて、そのままの勢いで私を抱きしめた。

震えを誤魔化すように力強く私のことを抱きしめる腕から、どれほど心配をかけたか分かる。


「ごめんなさい」


心配をかけたこと、久しぶりの温もりに包まれたこと、やっと心から安心できたこと。色んな要因が重なって声が震えた。

するとお兄ちゃんが頭上で深いため息を着いたのが聞こえた。


「たく、先に謝るなよ。死ぬほど説教してやろうと思ってたのに」

「……ごめんなさい」


体を離したお兄ちゃんが人差し指で私の額を弾いた。顔をあげると呆れたように息を吐いてフッと笑う。


「もういいよ。最悪の場合も想定してたんだ。こうやって生きて再会できただけで十分だ。本当に、無事でよかった」


お兄ちゃんがもう一度きつく私を抱きしめる。

いつもなら「やめてよ」と顔を顰めて引き剥がすけれど、今日ばかりは私もその広い背中に腕を回した。