どんな状況でも眉ひとつ動かさないほどの冷静沈着な彼女だ。笑った顔ですら片手で数えられる程度しか見たことがない。
そんな眞奉が大粒の涙をボタボタと零しながら泣いている姿があまりにも衝撃的で、咄嗟に言葉が出てこなかった。
「ま、眞奉? どどど、どうしたの!? どっか痛い!?」
「失礼しました。問題ありません」
「表情と言葉が一致してないんだけど!」
思わず突っ込みを入れてしまった。いつもと変わらない無表情でいつもと変わらない淡々とした声なのに、その目からは絶え間なく涙がこぼれ落ちていく。
どうすればいいのか分からず、とりあえず眞奉を抱きしめてその背中を摩った。
「本当にどうしたの? 何かあった?」
そう尋ねて見るけれど、眞奉は腕の中の眞奉は口を開くどころか微動だにしない。
肩にじっとしと湿る感覚から、まだ眞奉が泣いているのは分かる。ただ嗚咽も漏らさず黙って泣き続ける眞奉に、どうしたらいいのか分からず背中をさすり続けた。
「……巫寿さま」
いつもよりも少し低い声が私の名前を呼んだ。
「どうしたの? なんでも話していいんだよ」
「巫寿さま、私は」
「うん」
「私はこの力を貴女のために使うと決めています。それは、貴女が大切だからです」
低い声は言葉にしたことによって湿り気を帯びていく。咳払いをしたのは、きっとそれ以上の動揺を悟られないようにするためだろう。
眞奉がそう思ってくれていると知って、純粋に嬉しかった。眞奉は感情を表情や態度に表すタイプでは無いので、ずっと一緒にいたけれど彼女が私のことをどう思っているのかはいまひとつ分からなかったから。



