言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー




目が覚めると真っ先に美しい赤い目と目が合った。

無表情でもその瞳だけは、どれほど私のことを心配してくれていたのかがよく分かる。


「……おはよう、眞奉(まほう)

「おはようございます」


ゆっくりと体を起こすと、すかさず背中に手を当ててくれた眞奉は私の顔を覗き込む。


「ごめんね、いつも心配かけて」

「いえ」


相変わらず素っ気ない返事に少し肩を竦めながら、まだぼんやりしている頭を軽く振って当たりを確認する。

小綺麗な和室だ。10条ほどの広さで足の短いテーブルと座椅子が部屋の隅に寄せられており、私が眠っていた布団の隣には畳まれたもう一組の布団がある。

どこかの旅館みたいだけれど、おそらく本庁と提携している神職が利用できる宿屋のひとつなのだろう。

部屋の隅には大きなバックパックがある。カナビラには年始に禄輪さんから貰ったお揃いの御守りが括り付けてある。間違いなくお兄ちゃんの荷物だ。


「眞奉、お兄ちゃんは?」

「先程までここにおりましたが、少し前に風呂に行くと出ていきました」


だとしたらもう少し待てば戻ってくるだろう。聞きたいこともあるし話さなければいけないことも山ほどある。

今回はどれほど長いお説教になるんだろうか。


はぁ、とため息を吐いて後ろに倒れ込む。それと同時にしゃらんと軽やかな鈴の音色が耳元で聞こえた。