零れたそれが巫寿の頬に落ちた。驚いた巫寿がパチリと目を覚ました。
「うー……?」
不思議そうに手を伸ばし、騰蛇の頬を軽く叩いた。
その手を握りしめて頬に当てる。小さくて、柔くて、熱くて、心地よい。
「あっ、だー、まぁっ」
必死に何かを伝えようとしている姿が可愛らしくて愛おしい。
「ま、うー! まふ」
頬を何度もぺしぺしと叩きながら必死に口を動かす巫寿。首を捻った。
「ま、ほ! まほっ、うう……! まほう!」
巫寿がふにゃりと笑ったその瞬間、まるで強い風に煽られたかのような衝撃が走って僅かに身体が仰け反った。
脳裏で、真っ暗な空間の中にぽっと光が灯ったかのように白い文字が浮かび上がる。
眞奉────……眞奉。
それは、私の名だ。巫寿様がつけてくれた、私だけの名だ。
満足気に笑い声をあげる幼子を見下ろした。どこまでも済んだ瞳は自分だけを写している。この瞳の輝きを守り続けるのが、自分の使命なのだと思った。



