全く何考えてんの!? 勾陳あなたは好戦的すぎる性格をどうにかしなさい! 妹神使に、しかも赤ちゃんを抱いている相手に攻撃を仕掛けるなんて言語道断よ! 騰蛇も騰蛇よ。やられっぱなしじゃ勾陳が調子に乗るだけよ? 少しはやり返してもいいんだからね? でも赤ん坊を抱いて空を飛ぶのは駄目! 万が一のことがあったらどうするのよ。ふたりとも今日から一週間トイレ掃除よ。えええーっじゃないのよ勾陳! そもそあなたは家の事を全然手伝いもしないで……。
二時間にわたる説教は、泉寿の「ふたりとも、もう十分反省したと思うよ?」という助け舟により終止符が打たれた。
不貞腐れながら部屋を出ていった勾陳。騰蛇は泉寿の胸に抱かれる巫寿にそっと歩み寄った。巫寿は母親の腕の中ですやすやと気持ちよさそうに眠っている。
「言霊を使ったから疲れて寝ちゃったみたい。前も無意識に使っちゃって丸一日起きなかったのよ」
「……抱いてもよろしいでしょうか」
「もちろん」
泉寿から巫寿を受け取って胸に抱きしめた。眠っている赤ん坊特有の高い体温を感じる。体は小さくどこまでも柔い。
もみじのような手がぎゅっと騰蛇の着物を掴んだ。
────私の勘違いでなければ、こんな儚い体で、この子は私を守ろうとしたのか。
春の柔らかな日差しに悴む手が戻っていくような、胸の中をじんわりと温める優しい何かで満たされていく。
鼻の奥に水が入った様なツンとした痛み、目頭が無性に暑くなって、気が付けば目の縁から温かい雫が零れた。



