「ちょ、調子乗ってんじゃねぇぞ騰蛇ァッ!」
勾陳の足元の土が、溶岩が湧き上がるようにボコリと膨らんだ。形を変えて小さな礫となったそれが銃弾のように騰蛇へ降り注ぐ。
背を向けて巫寿を胸に抱き抱えた直後、背中に複数の強い衝撃が走り眉根を寄せた。泣きじゃくる巫寿がこちらを見上げているのに気づく。
その小さな頬に流れる涙を拭おうと僅かに身じろいだその瞬間、シュッ───と鋭利な土塊が耳のそばを横切り騰蛇の頬に赤い線を残した。
傷口からぷくりと溢れ出した血が騰蛇の頬を伝って巫寿の腕に落ちる。丸い目をより一層丸くしてそれを見た巫寿がたちまち顔を赤くして火がついたように泣き出した。
「ほら騰蛇、お前の赤ん坊が泣いてんぞ! 反撃しろよ!」
勾陳が後ろで腹を抱えて笑っている。巫寿を抱きしめる腕に力が籠った。
騰蛇の脳裏に先代審神者の言葉が過ぎった。
『騰蛇、あのね。 貴方はちっとも弱い神使なんかじゃないわ。貴方の炎はとっても強い。だからその翼の炎は誰かを傷つけるんじゃなくて、大切なものを守るために使うのよ』
神使としての力も弱く武術にも秀でていない私に、先代はそんな言葉をくれた。大切なものというのがなんなのか分からなかった。先代は時が来ればわかると言った。
今わかった気がする。
大切なものというのは、この子のことだったのか。
赤ん坊の柔い肌を傷つけまいとずっと畳んでいた翼を広げた。纏う炎がぼわりと空気を燃やしてはためく。
土塊は背中に当たる直前で炎に焼かれ一瞬で灰になり、騰蛇の足元にばらばらと落ちた。



