「おいおい! 赤ん坊なんかと喋って、いよいよ人間のおっかぁにでもなったつもりか?」
「やめなよ勾陳、また君に怒られるよ」
「勾陳は本当のこと言ってるだけだよね〜? 君もろくに守れないくせに子守りばっかりしてるんだもん! もう神使やめますって君に申し出ればぁ?」
本殿から現れたのは騰蛇と同じく審神者に召喚されて結びを作った十二神使の三匹だった。
土を司る十二神使・勾陳は牛のようなツノが生えた茶髪頭をガシガシとかいてひとつ欠伸をこぼすと、ニヤリと笑って鼻を鳴らす。
巫寿は騰蛇以外の十二神使に苦手意識を抱いているらしく、遠くから歩いてくる三匹を見るやいなや、みるみる顔を歪めてふぇと泣き出す。
軽くその背中を叩いた騰蛇は、兄神使たちに頭をさげて背を向ける。
「おっと、逃げんなよ騰蛇!」
勾陳のそんな声とともに、騰蛇の右耳のそばを握りこぶしほどの大きさの土塊がヒュンッと通り過ぎた。土塊はまるで意志を持っているかのように、騰蛇の足元にべシャリと落ちる。
振り返ると勾陳が腕を突き出して立っていた。手のひらは土で汚れている。
「いま、土塊を投げたのは勾陳ですか」
「だとしたら何だよ。やり返すのか? この中で一番弱いお前が? 最年少の天后よりも弱いお前が?」
ハハッと愉快そうに声を上げた勾陳。
「……いいえ」
「はぁ? お前さぁ、ここまで言われて腹が立たねぇわけ?」
「はい。挑発には、応じません」
後ろで見ていた二匹がブッと吹き出した。勾陳の頬が赤くなる。



