言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


外に出ると風が心地よいのか巫寿は機嫌よく声をあげる。

強い日差しを避けて梅の下を歩けば、そよ風に揺れる黄色い梅の実に興味深げに手を伸ばす。ひとつもぎって渡してやれば、甘い匂いが嬉しかったのか両手をバタバタさせて喜んだ。

巫寿の目にかかる前髪をそっと払って、騰蛇は腕の中で笑う幼子を見つめた。


最初はほんの僅かな好奇心から、この幼子を腕に抱いてみた。

先代の審神者と結びを作り日々を過ごす中で、彼女から何度も子供について聞かされたことがある。子供が好きだという彼女は、審神者を引退した暁には結婚し子を成すことを強く望んでいた。

「覚えていたらいつか役に立つかもしれないわよ」と米の入った袋で赤子の抱き方を教えられ、二人して米を抱き締め笑いあった日もあった。

そんな日々のことをふと思い出したからだろう。


初めて腕に抱いた赤ん坊は米よりも重く、米袋よりも柔らかく、炊いた米よりも甘い匂いがして、先代の手よりも温かかった。


梅の木をぼんやりと見上げていると、ぺしぺしと頬を叩かれた。視線を向けると巫寿がつぶらな瞳でじっとこちらを見ている。

眉をぎゅっと寄せて、あう、と声を上げた。最近はよく喋るようになってきて、笑う泣く以外の感情も見せるようになった。この困り顔も母親に瓜二つだった。

利発な子だ。言葉はわからなくとも何かを感じ取ったらしい。


「……なんでもございません」


そう答えると、しばらく騰蛇の瞳をじっと覗き込んだ後ふにゃりと笑ってまた梅の実を振り回し始めた。