「はぁ……本当に可愛い。巫寿、私が志ようちゃんですよ〜? ほら、あばば〜」
「もー、起きるってば」
呆れたようにそういった泉寿の表情もいつも以上に優しい。
「本当に、この子は私たちの希望ね」
ぷすぷすと膨らんでは萎む頬に鼻を近づけた。赤子特有の甘い匂いがする。
まだこの世界のことを何も知らないその寝顔は、世界で一番穏やかで純真だった。
「ん……一恍さん」
「泉寿? 大丈夫?」
顔をあげると青い顔で一恍の肩に寄りかかる泉寿の姿があった。
泉寿は産後の回復が芳しくないらしく、度々目眩や息切れ動悸に襲われるらしい。
「大丈夫? 少し横になる?」
「いいよ、すぐに帰るもの。ちょっと目瞑ってれば良くなるから」
「日の入りまでまだ四時間はあるし、少し休むべきよ。遠慮しないで」
じゃあ頼めるかな、と答えたのは一恍の方だった。
相変わらず嫁のことになるとこの男はとんでもない過保護になる。息子に遺伝しないか心配だし、第二子が女の子でそれが加速しないかも心配だ。
「一恍さん、その前に御手洗行きたい」
「任せて。ほらおいで」
軽々と泉寿を抱き上げた一恍。
「じゃあその間に私はお布団敷いてくるね────おーい、誰かいない?」
廊下に向かってそう声をかける。数秒後に方々からパタパタと走ってくる足音が聞こえて、三つの頭がひょっとこりと顔をのぞかせた。



