驚きで目を見開く。私と同じように驚愕の表情を浮かべるお兄ちゃんがそこに立っていた。
全身泥だらけで薄汚れた格好のお兄ちゃんは、髪は伸び切っていてボサボサだし無精髭になっている。目の下には酷いクマができており、この数ヶ月で十歳は老けたような印象だった。
「お、お兄ちゃん……だよね?」
変わり果てた姿に思わずそう確認すると、お兄ちゃんは震える足で一歩一歩と歩み寄ってくる。汗ばんだ手が私の両肩をつかんで、そしてそのまま力一杯に抱き締められた。
「お兄ちゃん以外に誰がいるんだよ。遅くなってごめんな、迎えに来たよ。一人でここまでよく頑張ったな」
私の耳元でそう囁いたお兄ちゃん。大きな手で優しく頭を撫でられると、これまでの緊張が一気に解けた。
怖かった、寂しかった、辛かった。不安で不安でろくに眠れなくて、毎日みんなのことを考えて涙が出た。私を守れるのは私だけで、ずっと緊張しっぱなしの日々。みんなから託されたものはあまりにも大きすぎて、ひとりで抱えるには重かった。
久しぶりの温もりに最初は体が硬直して、次第に氷が溶けるみたいに全身の力が抜けていく。汗くさいシャツの向こうに住み慣れた我が家の匂いを感じて、気が付けばくしゃりと顔を歪めて嗚咽を漏らしていた。
「お兄ちゃんッ、私……!」
縋るようにその背中に手を回して顔を埋めた。お兄ちゃんが力一杯に抱きしめ返してくれる。
「何も言わなくていいよ。わかってる。巫寿は十分頑張ったよ」



