言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


「今の志ようさんの身体は、空亡の残穢を大量に有しているせいで呪物と変わらない状態なの。正直私一人の実力じゃ志ようさんの体を助けられるかどうか分からない。でも本庁に助けを求めても、志ようさんの身体は大切に扱っては貰えないと思うの」

「それは、なぜだ」


冷静さを装うとした低く震えた声だった。


「ここにあるから安全なのであって、外に出せば志ようさんの身体は私たちにとって危険なものだから」


恣冀(しき)の瞳に激しい怒りの炎が宿った。勢いよく立ち上がった恣冀(しき)が私の両肩を掴んで激しく揺らした。肩の肉に、鋭い爪がくい込んで歯を食いしばる。


「君は、お前たちを助けるためにこうなったんだ!」

「……うん」

「君は怯えながらも、お前たちのために戦ったんだッ! なのにどうして!」


震えた声は切実で、胸に深く突き刺さる。それは大切な人が傷つく姿を間近で見て、何も出来なかった人の嘆きだった。

私の肩を掴む手に、そっと自分の手を重ねた。


「少し時間をちょうだい」

「……お前じゃ助けられないんだろう」

「うん。"今の私"じゃ」


この三日間、何も考えなかった訳じゃない。この鈴を手に入れたあと、私がどうするべきなのかずっと模索して、何度も色んな方法を考えて、結局たどり着く答えは毎回同じだった。

志ようさんと私に定められた運命があるのだと知ったあの日から、心のどこかできっと私は最後にこの道を選ぶのだとうすうす気付いていたのだろう。


「私を信じてあと五日……うんん、あと四日だけ待って。必ず二人を助ける、絶対に。約束する。志ようさんの想いも恣冀(しき)の苦しみも全部、私が引き受けるから」

「……何をするつもりなんだ」


小さく首を振って、その質問には答えなかった。十分傷つき疲れた恣冀(しき)には知らなくていいことだ。

恣冀(しき)が志ようさんの傍らに座って、優しくその頬を撫で始める。私は二人背を向けて、洞窟の出口を目指した。