志ようさんの反対の手に握られたものが目に入った。濁りひとつない金色の鈴に、細やかな花の刺繍が施された柄と朱色の房飾りが施された美しい巫女鈴。
間違いない。あれが三種の神器のひとつ、御覇李鈴だ。
手を伸ばし、志ようさんの拳を開こうとその手に触れたその瞬間、全身のうぶ毛が逆立ってぶるりと身体が震える。胃液が腹の底からせり上がってくるような感覚に、勢いよく手を引いた。だらんと台座から志ようさんの手が落ちる。
ハッと息を飲んだ。
そうだ。志ようさんの身体には今、空亡の残穢が閉じ込められている。この身体は呪物と同じなんだ。
私が初めて天地一切清浄祓を使った時のことを思い出す。全身を駆け巡る不快感と痛み息をすることもできなくて、その後は数日寝込んでしまった。
志ようさんはどれほど苦しい思いをしたんだろうか。
台座から落ちた志ようさんの手に触れた。身体中を着き刺すような痛みに唇を噛み締めて耐えながら、その指をゆっくりと開いていく。
しゃなりと音を立てて、志ようさんの手から鈴が離れる。
自分が死ぬかもしれない未来をを見て、可愛がっていた男の子が悪の道に走る未来を見てしまった志ようさんが選んだ最善の道が、鈴を隠して自分が犠牲になることだった。
志ようさんは最後まで私たちのために戦ってくれた。
だから次は私が、みんなを守る番だ。
「恣冀」
琥珀色の瞳が縋るように私を見上げた。



