言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー



肩上で切りそろえられたボブヘア、長いまつ毛に上向きの口角。私が覚えている志ようさんと、何一つ変わらない姿だった。

軽く目を閉じて横になっている姿はただ静かに眠っているようで、肩を叩けば目を覚ますんじゃないかと錯覚する程だった。

ただ、志ようさんの魂は間違いなくもうそこにはなかった。

白い頬、上下しない胸、青い唇に脱力した身体。肉体の保存で生前と変わらない姿を維持しているものの、その身体は確かにもう役目を終えている。


恣冀(しき)が私の横を通り過ぎて台座の前に膝を着いた。

白い手を握って静かに自分の額に押し当てる。慣れた動作だった。全てを受け入れたような横顔、それでもその瞳は十数年経った今でもまだ志ようさんを求めている。


十二神使と審神者は結びを作ることで主従関係を築く。けれどそれはあくまで双方に利益のある主従関係であり、十二神使側から結びを切ることを申し出ることもできる。

志ようさんの肉体から魂が消えた今、恣冀(しき)には志ようさんとの結びを維持し続けたところで彼自身にメリットはないはず。なのにどうして、十数年とこうして傍で守り続けたのか。もう彼女を傷つけて欲しくないと涙し、助けを乞うのか。

その目を見ればわかる。恣冀(しき)も私と同じなんだ。



────恣冀(しき)は志ようさんを、愛してしまったんだね。



だから志ようさんから頼まれたお願いがどんなに悲しいお願いだったとしても、それを全うし続けた。動かなくなった彼女のそばで冷たい手を握り続けた。動かない頬を撫で続けたんだ。