言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


大きな一枚岩がゴゴゴと音を立てて左右に開き、道が現れるなんて光景を想像していたけれど、舞が終わったあと岩戸を振り返ると、中へと続く入口がぽっかりと空いているだけだった。

これまでの苦労を思い出すとなんだか拍子抜けだ。


「なんか、思ったよりもあっさりしてる……」

「普通の人間ならまずここまで来ることが不可能だからな」

「なるほど」


行くぞ、と恣冀(しき)が先陣を切って洞窟の中へ足を踏み入れる。小さく息を飲んでその背中を追いかけた。

中は陽の光が一切届かず鼻先ですら見えない程の暗闇だった。眞奉を呼び出し、その炎を宿した身体で当たりを照らしてもらう。

中は想像通り、灰色っぽい剥き出しの地層に囲まれた狭い空間だった。外の濃霧が広がる渓谷とは一変して、洞窟の中は暑くもなければ寒くもない。湿気も乾燥もなく、風すら吹いていなかった。

恣冀(しき)は暗闇に怯むこともなく、迷いのない足取りでどんどん奥へ進んでいく。それだけ、彼がこの空間で目を覚まさない主を見守ってきたということだ。

ざ、ざ、と砂利を踏む私の足音が響く。

暑い訳でもないのにこめかみに汗が滲む。心臓はどくどくと音を立てた。


おそらく五分程度歩いたところで、恣冀(しき)の歩みが止まった。


「……眞奉、前に」

「はい。君」


私の一歩後ろを着いてきていた眞奉がゆっくりと前に出て、洞窟内を橙色の光で照らす。

洞窟の最奥だった。目の前は岩手行き止まりになっていて、六条程度の空間が広がっている。そしてその場所に存在するにはあまりにも不自然な白木のテーブル。

白布を敷いただけの簡易的な装飾のその上に、彼女は横たわっていた。