言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


隙間風にぶるりと体が震えて目が覚めた。あたりはまだ薄暗く、壁の隙間からはあさの白い光が差し込んでいる。

軋む身体に顔を顰めながら、暗闇の中スマホを探す。指先が何度か床を引っ掻いたところで、昨晩は枕元に置かなかったことを思い出した。


「ああ、そっか……充電ないから鞄にしまってるんだった」


ぽふ、と枕替わりにしていたリュックの上に頭を落として脱力する。目の上に腕を乗せて深く息を吐いた。


「眞奉、今って朝だよね」


天井に向かってそう話しかけると、枕元に強い人の気配が現れる。


「はい。君がお休みになられてから、4時間ほど経ちました。寅の刻あたりかと」


寅の刻……十二辰刻(じゅうにしんこく)で午前四時前後の事だったはずだ。

重たい頭を抑えながら体を起こす。視界が少しづつクリアになっていき、天井に蜘蛛の巣が張った埃っぽいあばら家のようなその室内を見渡した。

みんなの別れて二日目の昨日、朝方に山を登り始めて山を超える前に日が傾き、いよいよ野宿を覚悟した際にこの小さなお社にたどり着いた。

鳥居と5畳程度の本殿しかなく、社頭は草木が伸びきって拝殿の鈴は寂れて土の上に転がっていた。もう誰にも手入れをされていないお社なのだろう。

今にも崩れそうな本殿だけれど、連日コンビニのイートインスペースで夜を明かしていたので、一晩夜露を凌げて横になれただけでもありがたかった。