言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー



「上手だ、薫」


歪む視界の先で隆永が笑った気がした。

俺はずっとあんたに褒められたかった。認められたかった。愛されたかった。でも、こんな形になるのは嫌だ。

一瞬、薫の言霊が詰まったその瞬間。



「────()けまくも(かしこ)天手力男神(あめのたぢからおのかみ) (あま)岩戸(いわと)を砕きし剛力(ごうりき)以て 神威(しんい)を満たし給え」


芽が素早く祝詞を奏上した次の瞬間、まるで上から落ちてきた岩に押さえつけられるような不可が全身を襲った。立っていられずに膝を着いてそのまま床に転がる。

同じようにすぐ側で床に倒れ込む音が次々と聞こえた。渾身の力で首を動かす。後ろで戦っていた神職たちが呻き声を上げながら次々と床に膝をついている。


「……危ない危ない。いやぁ、ビックリした」


パンパンッと衣服の汚れを払う音がして首を戻した。顔を顰めて汚れた袖を見つめていた芽と目が合った。喧嘩に負けた子供のようにどこか拗ねた表情をした芽は、ふいと顔を逸らした。

背中に手を伸ばすも、もちろん届かない。


「め、ぐむ」

「ごめんね薫。俺もお喋りしていたいけど、今日のところは撤退するよ。父さんが登場するなんて想定外だったし」


芽が自分の喉に手を当てて口の中でボソボソと何かを呟いた。何かを唱えている。一体何を、と眉を寄せた次の瞬間「────あー、みんな聞こえる?」と脳内に芽の声が響いた。