「高天原に神留座す皇親神漏岐神呂美之命を以て 日皇太神を奉請り 青體の幣帛 白體の幣帛を百机に悉く備へ獻り 種々の物を横山之如く積足たらして 百度の置戸烏を以て祓給ひ清給ひて 朝日の豊栄の光照す天曉待ち奉る 祭祀の御太麻の倍心成就に常磐堅磐に守り給ひて 延る齡之事を八百萬神等諸共に所聞食と申壽す」
目の前が一瞬にして白に染まった。0.5秒遅れて強烈な痛みが目の奥を指す。日待之祓、太陽を神とした民間信仰の祝詞で日神の力を借りることができる。
言霊によって神通力を拝借する祝詞は、言祝ぎが多い芽の得意分野だった。
皮膚が焼け付くような感覚に歯を食いしばった。激しい熱が全身に降り注ぐ。頭を巡らせ次の手を考えていると、頭に布が被せられる。
ふわりと香るのは昔の記憶を掘り起こす、少し苦くて古臭い、でも何故か無性に安心してしまう匂いだ。
無意識にその布を握りしめる。僅かに光が遮られてほんの少し目を開けることができた。紺色の羽織の前合わせの向こうに、広い背中と自分に似たクセ毛が見える。
「祓へ給ひ清め給へ 守り給ひ幸へ給へッ!」
乳白色の結界が白い光を幾分か遮った。
「立てるか、薫」
目の前に手が差し出された。取るかどうかを迷っていると、脇に手を差し込み立たされる。薫の肩を抱いた隆永は目を細めて
「不服かもしれないが、お前の力を貸してくれ。俺が芽の動きを止める。薫は俺ごと芽を呪殺するんだ」
は、と声にならない声が漏れた。



