「おい薫ッ 生かすにしろ殺すにしろ一旦あいつをぶん殴れ」
嬉々の雑な指示の意味をすぐに理解して芽に向かって飛び出した。
最初の初撃で芽は自分達には攻撃しないこと、間合いに入れば身体で止めてくることは確認済みだ。おそらく嬉々は掴み掛って動きを封じろと言いたいのだろう。
間合いを詰めれば案の定、険しい顔をして組手の体勢をとった。
双子に生まれて同じ飯を食っただけあって、学生時代から体術系の授業ではよく芽と組まされていた。芽の癖は手に取るようにわかる。
普段は大胆なくせに戦闘になると急に慎重になるこいつは、間合いを詰められ襟を取られそうになると必ず手を弾いてくる。
伸ばした右を避けようと、芽が左手を振り上げた。僅かに胴ががら空きになった所で勢いよくおった膝を鳩尾にねじ込む。芽が反対側の手を鳩尾と膝の間に滑り込ませた。こめかみに汗を滲ませた芽が僅かに笑った。
「薫の癖は全部覚えてる」
顔を顰めた薫が舌打ちををして距離を取る。手の甲で唾を拭った芽が顎を引いて薫を見据えた。
─────来る。
芽が懐から人型の形代を取り出してフッと息を吹きかける。大人の大きさ程度に伸びた形代が紙飛行機のように宙を横切った。
薄い紙が刃物のように薫の白衣を切り裂く。咄嗟に顔を被った。手首と脇腹の表面の皮膚を形代がザッと切り裂く。
「あーあ、狙って外したのに薫が動くから。動くと怪我するよ」
「……ッ、お前はいつもそうだよな! すぐにそうやって責任から逃れようとする、昔もあの時も今も!」



