言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


流れるような自然な動作で、隆永が音を立てず手を合わせていたのに気付いたのは呪詞が唱えられた後だった。

隆永の身体中からぶわりと吹き出た禍々しい黒い靄、自然と発生する残穢とは違って、故意的に生み出された相手を呪うためのもの。

まるで吸い寄せられるように目にも止まらぬ早さで芽の身体中にまとわりついた。嬉々を抑え込む芽の手がほんの僅かに緩んだ。


「薫ッ、お前の友達を!」


反射的に体が動く。芽の腕に蹴りを入れてはじき飛ばし、その隙に嬉々を小脇に抱えて回収した。


「お前の親父生きてたんだな」

「まず先に"助けてくれてありがとう"でしょ」

「私一人でも何とかできたがまぁ褒めてやらんこともない」


尊大な態度にため息をこぼす。嬉々のお陰で張り詰めていたものが幾分か和らいだ。

素早く略拝詞を奏上した嬉々、乳白色の半球型の結界に怪し火の流れ弾が当たって弾ける。想定外のことが色々起きたせいで、周りのことが見えていなかった。


「お前本当にあいつを殺すつもりかというか殺せるのか」


確信を突いた質問に言葉を詰まらせる。


「あの人は、殺すつもりだって」

「私はお前の意見を聞いている。お前が1ミリも向いていない教師になった理由はあいつなんだろう」


ドキリとして思わず嬉々を見下ろす。嬉々は相変わらず表情を変えず、結界の維持に務めていた。

教師になった理由は、これまで誰にも話したことはなかったのに。