芽が小さく息を吐き出しゆっくりと目を瞬かせる。動揺に揺らいでいた瞳が落ち着いて、静かに隆永を捉えた。
「生きてたんだね、父さん。先代たちと違ってめっきり表舞台にも現れなくなったから、てっきりあの日に死んだんだと思っていたよ」
芽が離反を決めた日、本庁を襲撃したあと実家であるわくたかむの社も襲撃し、宝物殿から盗んだ國舘剣の模造刀で父親である隆永とその祖父母を切り付けた。
祖父母は回復したあと奉職に戻っているが、隆永は回復したあと直ぐに姿をくらましているので、襲撃後の隆永がどうなったかを知る者は少ない。
「お陰様で未だに雨が降る日は傷が痛む」
「そう……ごめんね、父さん。あの日、ちゃんと殺してあげればよかったね」
思わず隆永の横顔を伺う。その横顔は変わらず冷静で、何を考えているのか分からなかった。
「父さ……────ねぇ」
さっきは咄嗟に呼んでしまったけれど、今さらこの人を「父さん」と呼んでいいのか迷って、言いかけた言葉は飲み込んだ。
隆永が目線だけを寄越した。
「あいつ、もう話にならないよ」
「分かってる。じゃなきゃ実家をぶっ壊そうだなんて思わないだろう」
「分かってるならさっさと殺った方がいい」
一歩前にでると、隆永が手を伸ばして薫の胸を抑えるように阻んだ。



