言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


最後に会った日がいつかなんて覚えていない。ちゃんと覚えている記憶だと母親の神葬祭まで遡らなければならないかもしれない。

禄輪にあの家から連れ出されて以降は一度も実家には帰っていないし、父親が行方不明になっているという話ですら自分が知るよりも先に禄輪から教えられた。

頑なに実家に帰らず、父親が行方不明になるまで一度も会わなかった理由はただ一つ。


"幸が死んだのはお前のせいだ"

"お前を生まれた瞬間始末していれば、こうはならなかった"

"お前が幸を呪った"

"お前が家族を壊したんだ"


何度も何度もそうやって自分を責めたその言葉を、隆永の口から聞くのが怖かった。


俺はただ、父さんに嫌われたくなかった。


撫でられた頭に手を置いた。微かに残っている記憶の中の手の温かさと重なる。隆永に優しくされた記憶はあまりないけれど、辛い修行の中で唯一嬉しかったのが上手くいった時に叩くように頭に乗せられたその分厚い掌だった。

なんで、だって、俺はあんたのいちばん大切な人を奪ったのに。俺を恨んでいるから、禄輪のおっさんにあっさり俺を預けたんじゃなかったのかよ。俺の事が嫌いだから、一度も便りをよこさなかったんじゃないのかよ。

なんでそんなに優しい手で、昔みたいに撫でるんだよ。


「大きくなったな、二人とも」


その声色は確かに、まだ自分が嫌われていなかった頃の声と同じだった。