*
穏やかな笑顔に優しい声。その姿は昔から何一つ変わっていないのに、姿以外の全てがあの日を境に何もかも変わってしまった。
「やぁ。薫、嬉々。禄輪さんも、お久しぶりです」
本殿の祭壇に腰を下ろし、膝に肘をついてこちらを見ているのは、紛れもない双子の兄。血を分け、言霊を分けた、唯一無二の兄。
昔から、感情を隠して笑うのが得意なやつだった。それでもまだ、理解はできた。机を並べて勉強し、悪戯をして廊下を駆け抜け、同じ飯を食って、同じ時間を過ごして。そこで芽が何に笑って何に怒るのか、何となくわかるようになった。
でも今は、何一つ分からない。
こいつが何を考えていて、何をしたいのか、何を言いたいのか。
「よくも、俺の教え子に手を出したな」
聖仁、担任になったことはなかったけれども優秀で真面目で、間違いなく良い神職になる生徒だった。慶賀、俺が育てた生徒。手のかかるヤンチャ坊主だったけれど、よく慕ってくれた可愛い生徒だった。
恵衣も来光も嘉正も、巫寿も。こいつのせいで、知らずに生きていけたはずの痛みを味わった。どれだけ苦しかっただろう。どれだけ怖かっただろう。
芽が困ったように眉尻を下げて小さく首を振る。
「殺そうとして殺した訳じゃない。薫を怒らせるつもりはなかったんだ。どれもこれもお前と、嬉々をこの腐った界隈から守るためなんだよ」
頭に血が上って伸び出そうとした薫の腕を掴んだのは嬉々だった。
「自分の罪を私たちで正当化するなと何度言えばわかる」
「正当化するつもりはないよ。間違ったことをしている自覚はあるもの。ただ、こうするしか君たちを守れないんだ」
「私たちはお前にそんなことを望んでないッ!」
声を荒立てた嬉々。芽は駄々を捏ねる子供を見下ろすような目で薫たちを見つめ小さく首を振り息を吐いた。
穏やかな笑顔に優しい声。その姿は昔から何一つ変わっていないのに、姿以外の全てがあの日を境に何もかも変わってしまった。
「やぁ。薫、嬉々。禄輪さんも、お久しぶりです」
本殿の祭壇に腰を下ろし、膝に肘をついてこちらを見ているのは、紛れもない双子の兄。血を分け、言霊を分けた、唯一無二の兄。
昔から、感情を隠して笑うのが得意なやつだった。それでもまだ、理解はできた。机を並べて勉強し、悪戯をして廊下を駆け抜け、同じ飯を食って、同じ時間を過ごして。そこで芽が何に笑って何に怒るのか、何となくわかるようになった。
でも今は、何一つ分からない。
こいつが何を考えていて、何をしたいのか、何を言いたいのか。
「よくも、俺の教え子に手を出したな」
聖仁、担任になったことはなかったけれども優秀で真面目で、間違いなく良い神職になる生徒だった。慶賀、俺が育てた生徒。手のかかるヤンチャ坊主だったけれど、よく慕ってくれた可愛い生徒だった。
恵衣も来光も嘉正も、巫寿も。こいつのせいで、知らずに生きていけたはずの痛みを味わった。どれだけ苦しかっただろう。どれだけ怖かっただろう。
芽が困ったように眉尻を下げて小さく首を振る。
「殺そうとして殺した訳じゃない。薫を怒らせるつもりはなかったんだ。どれもこれもお前と、嬉々をこの腐った界隈から守るためなんだよ」
頭に血が上って伸び出そうとした薫の腕を掴んだのは嬉々だった。
「自分の罪を私たちで正当化するなと何度言えばわかる」
「正当化するつもりはないよ。間違ったことをしている自覚はあるもの。ただ、こうするしか君たちを守れないんだ」
「私たちはお前にそんなことを望んでないッ!」
声を荒立てた嬉々。芽は駄々を捏ねる子供を見下ろすような目で薫たちを見つめ小さく首を振り息を吐いた。



