「今なら……説教でも拳骨でも、嬉しいかもしれない」
「はは……ドーカン」
二人のそんなやり取りに頬が緩む。本殿の出口が見えたその時。
「お前らッ!」
泰紀が目の前に飛び出してきたかと思うと、長い木の板を大きく振り切った。鋭利な木片が木の棒に突き刺さる。
泰紀の影から、こちらに手を振りかざすぬらりひょんが不気味に笑っているのが見えた。
「油断すんなよッ! 天司は別室に追い込んだみてぇだけど、ぬらりひょんはまだここにいる!」
次の瞬間、泰紀の木板に青い火がついた。驚いて振り落とした泰紀に代わって鎮火祝詞を素早く奏上する。
振り返ると、赤い唇を横に引き楽しげに笑う伊也が立っていた。
「忘れんといてや、ウチもおるで!」
先に火をつけた尾っぽを伊也が振り上げた同時に、駆け付けた神職たちが間に割って入った。伊也の怪し火と神職たちの呪詞がぶつかり合い弾ける爆発音が響く。
「泰紀、恵衣! お前たちは自分と友達を守れ!」
神職のひとりがそう叫んだ。泰紀が素早く略拝詞を奏上し四人を囲う結界を生成した。そして大丈夫か?と意識が朦朧とする来光たちの頬を叩き傷の具合を確認する。
「泰紀お前、」
ぬらりひょんの所へ行かなくていいのか、そう問うよりも先に「いいんだよ」と答える。



