言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


俺だって今すぐ飛び出したいよ、と薫が呟く。肩を押さえ付ける薫の指が震えているのに気付いた。


「大丈夫、俺が育てた」


それは自分に言い聞かせているようにも聞こえた。


「説教はあとだ。今言えることはひとつ」


潜めた、だがはっきりと聞こえる禄輪の声。前を向く。今すぐ爆発でも起きそうなほど緊張感は最高潮に高まっている。


「守るために戦え」


神職の力は人と妖を守り、導くためのもの。自分を、仲間を、大切な人を守るため。

今こそ戦え。守るために、戦え。


禄輪が挙げた手を勢いよく振り下ろすと同時に、数名の神職が素早く呪詞を唱えた。扉が勢いよく前方に弾け飛ぶと同時に雪崩込むように中へ飛び込む。

あちこちで祝詞が奏上される。まるで一人一人が楽器を奏で、それが合わさってひとつの音楽をなっているように美しかった。


「神々廻芽と野狐たちを引き離せッ!」

「天司は予定通り別室に追い込むぞ!」

「子供たちの保護を!」


怒号が飛び交う中を走る。やがて力尽きるように互いに背を預けて座り込む"親友"たちを見付けた。気付けば強く床を蹴って、二人を思い切り抱き締めていた。


「待たせた」


声が震える。今はただ、二人が生きていたことが泣きたくなるほど嬉しかった。

ぼんやりと恵衣を見上げたふたりは、大粒の涙を零しながら笑った。


「遅いよ恵衣……」

「バカ恵衣……僕らもう遺言残しちゃったんだけど……」


普段なら苦い顔をする軽口も、今はただただ嬉しい。二人の脇に手を差し込んで立ち上がらせる。神職たちが逃げ道作ってくれていた。「後でたっぷり説教だ」と禄輪の怒号が聞こえた。