拝殿を抜けて本殿へ続く移殿に入った途端、羽衣でふわりと全身を撫でつけられるような感覚とともに、一瞬で背後の喧騒が消えた。
結界だ、誰かが非常に強力な魔除の結界を張ったらしい。
「なんだこ……ッ!?」
泰紀の口を後ろから塞いだのは、本隊の禄輪班に振り分けられていた神職だ。
唇に人差し指を当てて「シッ」と小さく呟く。こくこくと頷く泰紀を、今度は「なんでお前たちがここにいるんだ」とでも言いたげに鬼の形相で睨みつける。
負けじと見つめ返すこと数十秒、根負けしたかのように肩を落としたその神職は人差し指を軽く曲げて「着いてこい」と合図を送る。
じっと息を殺して身を潜める神職たちの間を通り過ぎて前に出た。扉の前で見たこともないくらいに真剣な顔をする薫と嬉々。そして、先頭には禄輪がいた。
そこだけが格段に空気が違う。鳥肌が立った。触れずともその背中からとてつもない緊張感と昂った気持ちが伝わってくる。
味方なのに、自分に喉仏にナイフを突き付けられているような気分だ。
息を飲んでその後ろに並んだ。僅かな扉の隙間から中の様子が見えた。卵色の半球型の結界の向こうに、小さな影が見える。来光と、来光に抱き抱えられた嘉正だ。
息が止まった。二人とも血だらけだった。一体どれほど痛め付けられたらあんなふうになるのか。いきり立ち前のめりになった所を、薫に押さえ付けられた。
「まだ駄目。突入のタイミングは二人が結界を解いた時だよ」
「でもそれじゃあいつらが……!」
「解いた瞬間、俺らが二人に結界を張る。今のふたりの状態じゃ戦闘が始まった時に防ぎきれないからね。かと言って今結界を張った奇襲に気づかれる」



