言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


たくさん失ったものがある。苦しんで、後悔を抱えて、それでもここまで進んできた。ここからは、後悔しないように生きる時だ。

だからかむくらの神職は恐れず先陣を切り、何度も立ち上がり戦い続けたのだろう。


「三で結界を解く。私が前を開く、お前たちには後ろを任せたぞ」

「俺たちで、いいんですか」


たまらずそう聞いた。豊楽は目を補足して大きな掌を頭に置いてきた。


「恵衣もかむくらの神職だろう? 仲間に背中を預けることに、不安なんてないさ」


行くぞ、と前を向いた豊楽の顔が引き締まる。「はい」と答えながら無性に自分の頬が緩むのを感じた。

優秀な兄に比較され、厳格な父に否定され続けた日々。そんな中で自分を認め、頭に手を置いてくれたのは、いつも神修の大人たちだった。

豊楽が前を向く。白い背中に身を寄せた。

いつも自分たちを守り、叱り、導いてくれる背中は大きかった。


三、二、……一!


豊楽の結界が解けた。激しい戦闘の音が鼓膜を震わせる。正面から放たれた怪し火を、豊楽が妖力で霧散させる。


「走れ!」


三人は一斉に床を蹴りあげると、拝殿の中央を走り抜けた。