豊楽が立てた指を中でくるりと回転させると、地面に伸びる黒狐の体が氷の縄で縛られる。
「豊楽センセーってそういや妖だったな!」
「お前なぁ……それ失礼な発言だって分かってるのか」
拘束した黒狐を壁の隅に放り投げた豊楽は「そんな話をしてる場合じゃないだろ!」と自分にツッコミを入れる。
二人の腕を掴み拝殿の隅まで引っ張った。素早く祝詞を奏上して簡易的な結界を張ると眉を釣り上げて振り返る。
「こんな所で何をやっているんだ!? お前たちは救護班だったはずだろ!」
「この馬鹿と先輩三人が急に走り出して、俺は連れ戻そうと追いかけたんです」
「おい恵衣てめぇ、何シレッと裏切ってんだよ!」
「事実を言っただけだ」
「お前だって二人を助けたい!とか涙目で言ってただろ!」
「泣いてない! デタラメを言うな!」
脳天に重い拳が落ちてきて二人はギャンと悲鳴をあげる。喧嘩してる場合かッ!と脳みそが揺れそうな程の大声で叱られる。
とにかく俺とここから出るぞ、と腕を掴まれて、ほぼ同時に振りほどいた。驚いた顔をした豊楽が振り返る。
泰紀と目を合わせてひとつ頷く。
「悪りぃ先生、やらなくちゃいけないことがあるんだよ」
「すみません、見逃してください」
それと同時に走り出す。豊楽の方が早かった。再び腕を掴まれてつんのめる。顔を顰めた泰紀が掴まれた腕を振りほどこうともがいた。
「離せ! 離してくれよ!」
「どうしてお前たちはそうやって危険に首を突っ込もうとするんだ! 来光たちなら禄輪たちが必ず無事に連れて帰ってくる!」
「それもそうだけど、そうじゃねぇよッ!」



