言祝ぎの子 結 ー国立神役修詞高等学校ー


細い息を吐いた。亀世が静かに目を閉じる。心臓が跳ねて慌ててその頬を叩いた。


「亀世!? 亀世しっかりしろ!」

「うるせぇ……まだ、しんでねぇよ」


亀世が僅かに口角を上げた。


「ああ、あと、もういっこ。天司をさした、あの短刀の、毒……十日間、効果がつづく。それまでに、かならず、仕留めろ……」


抑えた傷口からとめどなく血が溢れ出す。元々白かった顔は、もう血の気を失っていた。何度も細く息を吸って吐く。その姿に言葉が出てこない。


「嫌だ、嫌だ。自分で言ったんだろ。お前が死んだら私はどうなるって。俺もだよ、お前が死んだら、俺はどうなるんだよ」

「どうとでも、なる……だろ」

「ならねぇよ!」


妹を抱きしめたのは覚えている限りの記憶では多分初めてだった。壊れないように、でも気持ちが伝わるように、大切に大切に抱きしめる。

普段は無表情か悪巧みを考えついたニヤケ顔ばかりの亀世が、まるで赤ん坊のように安心しきった表情で頬を緩めた。


「よみがえる、予定だから、遺言は、いらないな」


亀世の冷たい指が二人の手を握った。言葉はない。それ以上の気持ちが伝わってくる。必死に握り返した。血で指が滑る。それでも握った。それで亀世が安心できるなら、いくらでも握り続ける。


「でも、一応言っとくか……」


うっすらと亀世の目が開いた。ぼんやりと二人を見上げる。ゆっくりと瞬きすると、大粒の雫がこぼれ落ちた。


「ずっと……馬鹿やってさ、笑ってろよ」


深く息を吸い込んだ。それが最後の呼吸になることが直感で分かった。ゆっくりと吐き出す。最後まで吐き出したところで、胸の上下が止まった。


「あ、ああッ……誰か! 誰か亀世をッ!」