「つる、きち」
「もうお前喋んなッ! すぐ景福巫女頭のとこ連れてってやるから!」
声が震える。わけがわからない。
背中に担ごうとして身体を動かすと、亀世が呻き声を上げた。慌てて手を離すと、「頼むから動かすな」と息絶え絶えに応えた。
「いまから、大事なこと、いうぞ」
「喋んなって言ってんだろッ! 瑞祥、形代で景福巫女頭に伝えてくれ! おい、周りに誰もいないのか!? 治癒祝詞奏上できるやついないのかよ!?」
「つる、きけ……よ」
なんだよッ!と噛み付くように見下ろせば、亀世の胸元にボトボトと雫が落ちた。自分は泣いていたらしい。
亀世が顔を顰めながらポケットをまさぐって小さな巾着を引っ張り出した。何度も精製を手伝わされた黄泉返りの薬だ。
「わたしが、もし死んだら、これ、試してくれ……」
「こんな時に何ふざけたこと言ってんだよ!? まだ完成してないんだろ!? そんなんお前に飲ませるくらいなら、今俺が飲んでやる!」
「やめろ、ばか。生きてるお前が、のんだら……黄泉返り、じゃなくて、黄泉逝きになる、ぞ」
笑えねぇよ、と呟いた声は震えて声になっていなかった。
「ずい、しょ」
ぼんやりとした目で、瑞祥を探す。ここにいる、と瑞祥が力の抜けた手を握りしめた。
「仇討ちどころか、仇討ち、二倍に、なるな」
「ならねぇよ! さっさと腹の穴塞いで、また三人で戦えばいいだろ!」
鼻水を撒き散らしながら瑞祥が叫ぶ。亀世は小さく笑って首の力を抜いた。亀世の全ての体重が寄りかかってくる。こいつはこんなに軽かったのか。



